久保先生との指導碁から〜その3

実戦再掲

 「悪手探し」という新趣向はどうやら評判が悪かったらしい。いつもの「耳赤・恥の1手」に比べて、皆様からのご回答をなかなかいただけませんでした。ザル碁に付き合うことさえ吐き気を催すのに、取り上げ始めたら切りがない悪手の検討などバカバカしくってやってられるか、という心境はよくわかります。それとも年末で皆様お忙しかったのか、ひょっとするとレベルの低い私のザル碁に紛れてお気付きにならなかったのかしら^^;

 とまあ負け惜しみ混じりの前置きはこれぐらいにして、たくせんさんがひと目で見破られた黒38(19-十六)から手順を遡ってまいりたいと思います。この黒38はおそらく本局最大の悪手。白5子を取り切ったことに満足して、どうせならダメを詰めておいた方がよかろうぐらいに軽く考えてひょいと打ってしまいました。これでは白19-十五放リコミからのコウ仕掛けを常に心配していなければなりません。現時点では白の被害も甚大なので実行できないとしても、こんな爆弾を抱えてプロの先生と打つなんて考えられない。次の白39を見て静かに投了すべきだったかも。久保先生は「当然の19-十五に打っていれば、最終盤まで黒がリードを保っていたかもしれません」と気配り秀夫流で慰めてくれましたが、残念ながらせっかくのご厚意を額面通りに受け取ってはいけないようです。そもそも白の打ち方が違ってくる。白39以降、実戦よりはるかに厳しく打ってこられただろうし、特に右辺の打ち方はまるで違うでしょう。

参考図1 参考図2

 直前に打った黒34(18-十三)もひどかった。涼しい顔して単に18-十五(黒36の点)に切れば、白が17-十五にカカエて反発しても黒18-十三と外からアテればいい。白19-十五と1目抜かせても黒18-十二へ逃げておいて白の一段を丸呑みできます(参考図1)。結局白は黙って18-十三にツグしかないので、そこで黒19-十五に打って白5子を味よく腹中にできるという寸法。外側の白に目がないから実戦とは大差でした(参考図2)。

参考図3

 さらに遡って、実はもう一つの悪手がありました。黒22(10-十六)です。ここは黒8-十七から白に迫って、白10-十六、黒上ハネ(10-十五)まで打っておけば(参考図3)、白を分断する実戦の黒26は成立します(前回の参考図1でお確かめください)。黒の置き石の高目(5-十六)もとてもいい位置にありました。この時点で私は黒26の分断作戦に心が行っていましたが、読み抜けがあってはいけないからもう一つ念を入れて黒22押シを打ってしまい、後に左下の黒に大いなる悪影響を自ら招いてしまいました。じっくり読み切って8-十七へ迫れば、白はこの状態で下辺を放置できるかどうか。黒も右下が死に残り。下辺を早めに切り上げていつ黒26に回れるかがカギになりそうですが、4子の置き碁としては十分満足だったのではないでしょうか。

 この後、ヨセの段階になって投了しましたが、先述した気配り秀夫流のお慰めはこの時頂戴しました。当初は白39以下も並べて皆様にご批判いただこうかとも考えましたが、ノーテンキと言うか厚顔無恥と言うか、悪手を並べるうちにさすがの私も棋譜を曝す気持ちがくじけました。私のザル碁を前座として、お口直しに当日のもう一人の講師、武宮陽光先生が最近の大竹理事長との対局から、プロ・アマを問わず実戦によく出てくる形を題材にとてもタメになる講座をご披露してくれました。人一倍勉強熱心なかささぎさんにたっぷり咀嚼いただいた上で解説していただきたいと存じます。

亜Q

(2010.12.6)


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