耳赤・恥の一手 亜Q-聖健 パート2D

第五譜 (47再掲-65)

 今回はなぜか回答者がわずか3名、重複回答があるので候補は2点に絞られました。正解後の数手を示せば、きっとどなたも納得される絶対のコースだと思われますが、(不肖私めと同様に)このルートに思いが到らないと、なかなか確信が持てない局面かもしれません。しかし私は何もわからない強みで、それほど迷わずに黒48を着手しました。

 まず考えたのは、貴公子が指をしならせてノータイムで白47と飛び出した自信の拠り所は何か。黒15-四以下の5子はただでさえ白14-四ツキダシまたは14-五ツケコシから切断を狙われている。現時点では耐えているけれど、15-六や16-六あたりに白石が来れば直ちに実現してしまう。だから私は、「15-七ツキダシだけはない」とノータイムで即断していました。もちろんその背景には、貴公子との日ごろの深い信頼関係があればこそでした。

 そこで私が打った手は、梵天さんと同じ18-六。遅かれ早かれ切断を防ぐ必要があるなら、その前に、白からのほぼ先手利き(右上隅へのワタリを見ながら眼形の足しにする同点)を“機敏に”封じたつもりでした。白49を18-七に押さえるのは利かされ、と言うより梵天さんがご指摘の通り、今度こそ黒は15-七から出切りを敢行すれば白は右上黒との攻め合いは負け(16-六のところが致命的な弱点)。となれば今打ったばかりの白47を見捨て、後手で右辺の生きを図るのみ(白18-十二ツケ、黒18-十三オサエ、そこで白17-十一と打てば、黒はどこかツグ必要がありそうだから何とか生きかな?)。いずれにせよ、黒万々歳となる仕掛けでした。

 それやこれやで、白49(15-七ピンツギ)は必然の一手。黒はさらに黒50(18-七)を利かして白51(17-七)と代わってから黒52(12-六)とコスんで切断を防ぎました(14-五ナラビよりも働いていると思います)。正直に告白すれば、このあたりの一連の流れを「黒が打てる」と思い込んでいました。しかし貴公子から後で聞かされた「正解」に気がついていれば、実におめでたい打ち方だったと認めざるを得ません。「知らぬが仏」とはまさにこの時の私(そして梵天さん、ザル碁の私に同調いただき、ありがとうございました。ままならぬ憂き世に一人でも同好の士がおられると地獄で仏に会った気がします)でした。

 ところが、貴公子が「こう打たれたら白がつぶれていた」と指摘された着点は、前回ズバリ賞のモンパパが声高らかに表明され、すぐにたくせんさんも賛同された右図の黒1でした。以下、モンパパが指し示した道をたどれば、白2、黒3、白4、黒5(ここで黒は16-六放り込みでコウを仕掛けるべきでしょうが、それでも後に示す貴公子の正解に比べれば明らかに劣りします)ならば、白6まで。15-四以下の黒5子を取り込んで右上からつながる大きな地(ざっと40目ぐらいでしょうか)にしながら不安定だった右辺をしのぐ。一方、黒は白47(14-七)を腹中にして中央に莫大な地模様を完成させる。ひょっとするとたくせんさんが言われる「五十目勝ちの碁」が実現するかもしれません。

 言うだけ野暮ですが、私はこの時点でウワテに70目ほどの確定地を与えてはまるで自信がありません。しかし特筆したいのは、右辺の白を攻める壁の役割を果たしている右上の黒数子を捨てるなど夢にも思わなかった私に対し、「中で勝負!」と果敢に宣言するモンパパの卓抜な着想とたくせんさんの賛意を、故大沢監督をご贔屓にしていたらしい梵天さんと同様に心から「アッパレ」と称えるのにやぶさかではありません。善悪は別にして、まさに目からうろこが落ちる思いがしました。

 では、お二方が“正解”だったかと言われれば、まことに失礼ながら賛成はできかねます。なぜなら、右図の黒1ツキダシ、白2と進んだ次の一手が貴公子が示された正解とは正反対だから。すなわち、黒はここで容赦なく右図の黒3と放り込む。次いで白が16-五に取っても17-七にツイデも黒は15-五と有無を言わせずコウを挑めば白打つ手に窮すという次第。その後白がもがき苦しみながら右辺を後手で生きたとしても、黒は右上5子を犠牲にすることなく白47を取り込み、それこそ「五十目勝ち碁」を謳歌できたでしょう。このルートを知れば、黒5子を進呈した上で「白に小さく生きてもらえたかな」とはさすがにノーテンキに映ります(モンパパ、ごめんなさい!)。

 ザル碁の強みは、自分のヘボに気づかないまま、まるでへこたれずに(それどころか、しばしば意気揚々と)後を打てること。白49で虎口を脱した白は53以下ツケノビから黒60と進み、白61以降、黒の金城湯池の中央から下辺へとなだれ込んでいきます。このあたりで私が心配していたのは、白から右辺15-十切りと下辺7-十六からの逃げ出し。まず、2間に飛び出した白の薄みを狙いつつ黒62(13-九)と15-十切りに備え、白63(13-十二)、黒64(14-十一)を交換後の白65(10-十一)守りを待って黒66へ手順を進めました。後で私が歯軋りしたこの黒66を、今回最後の次の一手とさせていただきます。

亜Q

(2010.10.14)


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