いまごろになって、「 80 年祭」

 何しろ80年と言えば平均的な人間の寿命。その80年でたった1度のイベント。茶道にも造詣が深いらしいヨタロー前名人の言葉を借りれば「一期一会」。「日本棋院80年祭」を覗くなら、平日でも2004年11月16日に出かけるしかない。

 30分ほど遅れて到着すると、日本棋院2階の催し会場は女流早碁の真っ最中。冷静な私はすぐに目算。立ち見客を含めてざっと500人ほどが熱心に観戦中だった。黒番・鈴木歩女流最強位(当日時点、12月に新海洋子五段が奪取)、白番万波佳奈女流棋聖。優勢の黒が自信満々で放った決め技が、どうやら打ち過ぎだったらしい。白が妙手で返してスリル満点の終盤。さすがは今打ち盛り同士の面白い碁を堪能させてくれた。

 午後のメインイベントはトップ・プロ5人同士の団体戦(1人3手の連碁)。大竹監督率いる若手チームの黒番。高尾、柳、三村、ソンジン、チョーウ。リン監督率いるおじさんチームは、覚、立誠、依田、光一、武宮(出場順)。

 棋士は老若男女を問わず誰でも好きだが、応援するならおじさんチーム。だが気がかりな点がある。連碁は個人的な実力より安定感とチームからの信頼感が肝要。その意味でおじさんチームには“あぶなっかしい”メンバーが2人もいるのだ。もちろん、シャトルではございませんが、この際名前は特に隠しましょう。

 この碁も予想以上に面白くなった。最初の2手ずつ打った遠来客の功績だ。北海道の若い女性は星と三々、九州の中年男性は高目と星。悪びれずにノータイムの着手もいい。それからの流れは期待通り、いや、懸念した通り、個性を強調する着手が目立ってきた。となれば当然の宿命。自我が確立している歳の分だけ、おじさんチームが不利になる。プロ棋士の碁に少しでもご関心があれば、次の暴論にも共感していただけるはず。どうみても「依田⇒光一⇒武宮」の流れが著しく不自然。私でも勝てそうな気がするぐらい。

 いつの間にか白は中央を分断されて勝ちにくい局勢になっていたらしい(黒チーム監督談)。ところがこのまま終わるおじさんたちではない。シャトル渾身の勝負手を境に闇試合模様に。この闇に光を灯したのは、やはりヨダコータケ(?!)トリオの“魔の乱気流”。苦渋の作戦タイムで罵詈増減やら弁明やらが飛び交う中で、シャトルが終局宣言。負け戦にも美学がある。イベントの予定終了時刻を測ったような見事な「負けました」だった。

※「80年祭」の話をしまいこんだまま、「ウックン」との握手を思い出して『ニュース・お知らせ』欄への投稿が遅れました(と言うより、忘れていました)。「六日のあやめ、十日の菊」ではありますが、“亜Qファン”におだてられて古いニュースをお届けしました。

亜Q

(2004.12.26)


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