「囲碁ファミリー対抗戦」はいかが?

2012年の千寿会新年会は、講師を務めていただいた千寿師匠と高梨聖健八段、その新妻の井澤秋乃四段が市谷の日本棋院で開かれた「ペア碁選手権2012」会場から駆けつけ、関西の囲碁雑誌『梁山泊』編集部の長谷川加奈美女史も加わって大賑わいだった。

都内で新婚生活を始めてまだ2ヶ月足らずのご両人は、互いの呼び方を尋ねられてもじもじされた。家の中で秋乃さんは「名前を呼ぶ」と答えられたが、どうやら「ケンさん」と呼ぶらしい。聖健さんは確答せずにとうとうモニョモニョしたまま。「現代のナルシスト」と棋士仲間から呼ばれる聖健さんにとって、こんな内輪のことを他人に聞かせるのは恥ずかしいのかもしれない。では、仲間内ではなく外部の人の前では連れ合いを何と表現するか。聖健さんは「ボクの奥さん」と答えてくれたが、秋乃さんは悩みっぱなし。お二人はそれぞれ昭和46年、53年生まれだから“熟年結婚”と言うべきだろうが、新婚独特の初々しさが感じられて千寿会会員の微笑を誘った。

そんなやり取りの合い間、二人のご成婚で強力な囲碁ファミリーが誕生したことに気がついた。聖健さんの愛妹の聖子(しょうこ)さん
はご存知の通り、山下敬吾名人・本因坊の愛妻であり囲碁インストラクターも務めるアマ強豪。秋乃さんの愛妹の萩乃さんも囲碁インストラクター。親族5人でこれだけのメンバーが集まるのは珍しい。

ところが、本家本元が身近におられた。もちろん、千寿師匠を長女とする小林ファミリー。長男の孝之さんは日本棋院所属の準棋士、次男の健二さん、三男の覚元棋聖・碁聖、さらに覚さんの女婿、孔令文七段(新年に昇段)を含めてプロ棋士が5人勢ぞろい。向井三姉妹も長女の芳織二段が三村智保九段に嫁がれたから長島梢恵二段、向井チアキ五段(新年に昇段)でプロ棋士4人。羽根直樹碁聖も父親の泰正九段、夫人のしげ子初段と義兄の松岡秀樹八段を加えてプロ4人。棋聖、名人、碁聖などの名誉称号を持つ昭和の大棋士、小林光一さんは女流マルチタイトル者で愛娘の泉美六段、女婿の張栩棋聖・王座(大七冠)で鉄のプロ棋士トリオ。関西総本部の山田紀三生元王座・NHK杯者を中心とする山田三兄弟もいる。このほか、王立誠元棋聖・王座は長女がプロ、長男は挑戦中。夫婦、親子、兄弟の二人プロ棋士は多数例がある。棋士という職業は、家庭と職場環境に加えてDNAに才能と適性が左右されるから、身内が多いのは当然なのだろうか。

となれば、どこのファミリーが最も強いのか知りたくなるではないか。仮にチームメンバーを5人、3勝すれば勝ちとすると、組み合わ
せ抽選の運不運や無名の身内助っ人の存在も絡んで予測はとても困難。少なくとも、昔開催された星座別対抗戦より興味深いと思われるのだが、どこかスポンサーになっていただけないものか。このご時勢では難しいとなれば、稀代の強運の持ち主、かささぎさんに宝くじを当てていただいて、「かささぎ杯囲碁ファミリー対抗戦」を創設していただくのが早いかもしれない。

亜Q

(2012.1.29)


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