ファミリアーな魅力をみんなで手作り −ふれあい囲碁大会から−

覚、笠井、孔先生らによる指導碁風景

かささぎさんが見事に優勝された「ふれあい囲碁大会」は、主催者と棋士、それに参加アマチュアが手作りで磨き上げたファミリアーなイベントでした。

主催者は(財)中小企業レクリエーションセンター。同財団の生涯学習事業の一環として、卓球、バドミントン、オカリーナ教室などに次いで一昨年に発足した同大会は、初回20人、2回目40人、3回目の今回は60人が参加。毎回200人近い参加者を集める日本、関西両棋院主催のイベントとは格違いの規模ですが、それもそのはず、まるで宣伝していない。参加者の口コミでじわじわと広げてきたのだそうです。

最大の魅力は、主催者と棋士、アマが垣根を取り払ったアットホームな雰囲気。棋院主催のイベントは互いに裃を着た感じが付きまとうのですが、この大会はそのよそよそしさが全くありません。その理由は、何と言っても覚九段と先輩の笠井六段が足並みをそろえて主催者側の立場で懸命にサービスに努めているから。つまりお二人が“手塩にかけて”育てたイベントなのです。今回新たに加わった孔令文四段もお二人を見習って会期中100局近い指導碁を実践(負けたのはわずか2局!)されました。この3棋士にインストラクター2名(伊瀬さんと木下さん)が加わって、指導碁はもちろん、アマ同士の対局でも食事時でもどんどんアマの中に入って気軽に話しかけたり質問に答えたり。2泊3日の期間中、一人で休めるのは寝る時ぐらいだったでしょう。

世話役は財団の生涯学習普及部スタッフの皆さん。課長、係長といった肩書きをかなぐり捨て、大会運営から会場設営、さらにビールや灰皿運びまで、ホテルマン顔負けのサービス精神を発揮されました。 碁には素人かもしれませんが、お客さん一人一人の注文や相談に汗だくになりながら心を尽くして応対している姿は傍から見ていても気持ちがいいものでした。

これに対して棋院主催のイベントに参加する棋士は毎回代わる助っ人役。“自分たちのイベント”といった意識はどうしても薄れてしまう。アマの方もあまり自分だけ馴れ馴れしくしてはいけないと自粛してしまいます。棋士の側も誰にも分け隔てなく公平に接しようとするあまり多少近寄りがたくなる傾向があります。世話役の棋院事務局の対応は手馴れてはいるものの、大量生産・大量販売的な運営に陥りがちな面もありそう。


覚先生と五段クラスでで優勝(7勝1敗)したかささぎ氏

笠井、覚両プロに感化されてか、お客さんのアマのマナーも素晴らしいものでした。覚、笠井、孔、そして亡きハンス・ピーチプロの教室から誘い合ってきた人が多いせいか、お互いにすぐ打ち解け合って大会特有のギスギス・ピリピリした雰囲気がありません。この種の大会につきものの味の悪いトラブルは皆無。私は今回が初出場でしたが、対局前の挨拶で初対面の相手から「粗相を打つかもしれませんがどうぞご容赦を」などと言われてびっくりしました。仇敵のように出会った初対面同士が、打った後に気心の知れた古い知己となる、これが碁の最高の醍醐味かもしれません。

参加者の棋力はアマ七段格の地域大会常連クラスから15級の初級者まで広がる裾野の広さ。女性が2割を超え、級位者は12名。20歳の女性から81歳の男性まで、年齢を超えてともに楽しめる碁の素晴らしさを改めて認識させられました。


覚九段の長女、と言うより孔婦人の清芽(さやか)さんは初段で登録、敢えてきついハンディを背負って挑戦されましたが、さすがに負けがこんだようでした。この種の大会では低めの段級位を申告する例が多いのですが、その意味では実にさわやか。お人形のようにかわいらしい笑顔もとても印象的でした。

棋院や地域主催の普通の大会とは一味もふた味も違う「ふれあい囲碁大会」は、3人のプロ棋士の熱意、お客さんからの好評とひときわ高いリピーター率に支えられて、今回会期中に次回開催を年内の12月5日(金)〜7日(日)に決定したそうです。しかも2泊3日で3万7千円(朝昼晩各二回食事付き、無料指導碁打ち放題)という安さ。飲み放題のパーティーやたくさんの景品が用意されているビンゴ大会などのサービスもあります。会場は財団の研修施設ですが、富士山が見える二つの大浴場をはじめ箱根のホテルと遜色のない施設とサービス。笠井、覚両プロは「100人を目指したい。参加者が増えても実質的なサービスは決して落としません」と約束してくれました。あなたもぜひご一緒に楽しみませんか。

亜Q

(2003.5.23)


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