囲碁の知・入門編

平本弥星   集英社   2001.4

 著者はプロ棋士で1952年生まれ、現在六段である。「この一冊で碁がわかる!」と銘打っているが、初めての人がこれだけで判るかどうか。
 はじめに簡単に碁の説明をしている。しかもそれが「碁の全て」ともいえる。碁の難しい問題はそれから派生したものだ。
 それからいきなり高級編、碁に関する諸々の知識編だ。碁は知らなくても知識は判るから、入門編といっても間違いではないが、入門者にはちょっと 手が出
ないだろうな。
 碁を知らない人と、碁を知っている人に
 ともいう。一通り碁を知っていて、歴史や関連知識に興味のある方に向けて書いたといえよう。
 碁は脳の健康スポーツ。いったいどんなゲームなのか。なぜ碁盤は19路なのか。定石とは何か。記憶力がよくないと碁は強くなれないのか。
 定石は忘れよ。囲碁は植物のような仮想生命である。という見方で、囲碁という知について説く。
 「あとがき」にいう。
 とくに、碁を知らない人に一読して碁がどんなものかわかった気分になっていただきたい。
 それで入門書ではないが「入門編」としたのだった。

 内容は、例えば、元禄繚乱という大河ドラマがあった。そこで碁の場面があるのだが、手つきが碁を打ち慣れているようには見えなかった。俳優の中 村勘九
郎さんは碁を打たないらしい。と推測する。これはわたしがよく武侠ドラマで指摘するのと同じ。
 日本囲碁規約 の冒頭に、この規約は対局者の良識と相互信頼の精神に基づいて運用されなければならな い。
 とある。勝ちたいために故意にマナー違反をするような棋士の出現を想定していないのだ。
 しかしながら、先のアジア大会のように、外国では想定外の棋士が出現している。想定外は津波ばかりではない。
 わたしが注視したひとつは盤の広さである。中国では昔の盤に、17路盤の、縁がなく一番外側の線のところでカットしたような盤が見つかってい る。

 一番外側には置けないので、17路として使えないと思うが、昔は17路であったというのが納得できる。もっとも普通に使っていたものかどうか、 現代
の13路盤のような例外的なものの可能性もある。もしこれが普通の碁盤なら、漢代まで十七路ということになるのだが。
 それから、よく昔は占いであったというが、それは派生したのであって、本来はゲームであろうという。説得力がある。
 歴史に関しては江戸時代の話を省いている。調べが済んでいないというが、おそらくすでに沢山の本が出ているので、自分が出るほどのことはないと 思った
のではないか。
 中国では、囲碁狂ともいうべき南北朝の梁の武帝のころに19路の碁盤が用いられ、長足の進歩が見られたのではないか、という。

 梁の武帝については、「奔流」の碁  参照

謫仙(たくせん)

(2011.7.26)


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