イマジン@ヒマジン

 六日のあやめ、十日の菊。すっかり時期遅れになってしまったが、せめて1月中に「初夢」の話を聞いてほしい。きっかけは、かささぎさんが去年の12月に歌いまくった「イマジン」。きっとジョン・レノンの命日を思い出すのだろう、クリスマス前までの期間限定で毎年恒例のようにがなり立てる。実に行動パターンが読み易い御仁なのだ。

 私は性格が良過ぎるのだろう。たとえその歌がどんなに「歌うは極楽、聞くは地獄」であっても、いつしか感情移入し、原曲のココロを深くつかみ取り、ありとあらゆる感性を導入してイマジネーションを掻き立ててしまうのだ。ヒマジンのサガなのだろうか。

 この伏線が正月早々、途方もない初夢となって顕在化した。何とこの私がゲイツやバフェットを超えるようなおダイジンになっていたのだ。億万長者のノーブレス・オブリージュだかレゾン・デトルだかを一言すれば、それはバラマキでしかあり得ない。私は全資産の1%をユニセフと戦場の犠牲者たちに、もう1%を学問・文化・スポーツの分野に投じることに決めた。その際の配分基準は「私が価値を認め、かつ相対的に報われていない分野」。私は野球やサッカーも好きだが、トップクラスのアスリートに限らず関係者の報酬は概ね恵まれている。一方で、詩人やゲージツカ、研究者などは、価値の高い仕事をしていても一般的に処遇はたかが知れている。こうした地味な分野で頑張っている人に愛の光をたっぷり注ぎこむのだ。

 こうした配慮から、囲碁界には1000億円ほどを給付することにした。これを棋士、棋院関係者らに一律に定額給付すれば、1人当たりざっと1億円ほどになるが、そんな愚かしい方法を私は採らない。まず300億円ほどを新棋戦創設に充てる。棋士は勝負師だから、徹底的に「利己」を追求していただく。ただし、賞金は少数の人だけに厚くするのではなく、参加者全員になだらかな傾斜をつけて配分する。敗者あっての勝者なのだから。

 残りの700億円は、「利他」あるいは「無私」とも言うべき貢献・活動に対して細大漏らさず高額の報酬を給付する。日本の碁界に深い影響を与えたゴセーゲン、中国・韓国を含む若手育成に情熱を注いだシューコー、さらに故人ではあるが、多くの俊才を育てた大木谷、私財をなげうって日本棋院を盛り立て、海外普及の礎石を築いた薫和らには本人、遺族を問わず手厚く報いたい。囲碁界や棋士たちの内幕や勝負の機微を活写したテンコレ文士(中山典之六段)や欧州で孤軍奮闘の普及活動を続けてきた文化交流使チーママ、アマチュア普及システムを創設し、運営したシラエ退役八段らも当然有力な対象になる。もちろんこれは私個人の恣意的な判断ではなく、評価のためのプロアマ混成の衆知を集めて客観的に貢献ポイントを積み上げていくことになろう。

 ともあれ、新春早々実にいい夢を見た。目覚めの気分も最高だった。ところが古女房が私の寝言を聞きつけたらしい。「ねぇ、イッセンオクエンて何よ」としつこく問い質すではないか。師走の使い込みがたたって女房から前の日に1万円ほど借用したばかりの私はとてもバツが悪かった。

亜Q

(2009.1.14)


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