還珠格格の碁

 格格(ge ge)とはお姫様の意味。満州語である。そのことから判るように清の時代の物語。
 乾隆帝は、庶子である娘を、公にできないので養女として引き取った、という伝説がある。
 還珠格格は、「帰ってきた珠のお姫様」の意味。
 主役の小燕子はヴィッキー・チャオの名で知られた趙薇が演じる。
 1998年から中国と台湾の共同制作で作り始め、大人気となった。韓国ではこの人気に恐れをなし、中国ドラマを禁じたとか。本当かなあ。

 この中に碁の場面がある。
 小燕子が還珠格格となり、夏紫薇(本当は夏紫薇が乾隆帝の娘)と夏紫薇の侍女金鎖を婢として、三人は漱芳斎に住むことになった。
 乾隆帝のところに、漱芳斎では毎日歌曲が流れると注進が入り、乾隆帝は一人で見に行く。そして中に入り、夏紫薇の歌をあらためて聞くことになる。
 乾隆帝は夏紫薇と金鎖の料理に満足し、「紫薇は琴棋書画なんでもできる」と小燕子から聞いていたので、夏紫薇と碁の対局を始める。

 横座りで一晩中対局することになる。腰や首が痛くなりそう。一局打ち終わると、金鎖が作って数える。最近では立会人が作るらしいが、当時立会人が作るような習慣があったのか。

 乾隆帝の黒番で一局目は乾隆帝の半子(半目)勝ち。信じられないと二局目。
 画面では、はじめに黒の乾隆帝から見て左辺の星あたりに白の夏紫薇が打ち、次に乾隆帝が右辺の星あたりに打った。そして盤面が現れ、石の位置がおかしいが、それはともかく夏紫薇が白4を打つ。してみると黒が先だったのか。

 二局目の布石。始めの4子はともかくとして、そのあと実際にこんなふうに打った例があるのだろうか。それともでたらめ?
 結果は黒一子半(一目半)勝ち。当時の数え方は日本ルール(中国の旧ルール)、しかもコミはないので半目や一目半とはならないはず。
 結局四局打って、乾隆帝の四連勝。
 夏紫薇は「母から、書は練習すればうまくなるが、碁は天分が必要と言われた」
 しかし、乾隆帝は夏紫薇がわざと負けたことを判っている。
「もう一局、わざと負けるなよ」
 この局は夏紫薇が勝ってしまう。乾隆帝が黒を持つのは良いが、黒先がおかしい。白先になるはず。

 乾隆帝は「ついに朕に勝つ人に会えた」と上機嫌。
 朝になってしまった。朝議に出なければならない。令妃が着替えを持って迎えに来た。

   …………………………

 乾隆帝が小燕子と夏紫薇を伴い出巡に出かける。三ヶ月の予定。乾隆帝はお忍びで旅をしたという伝説がある。水戸黄門のような話だ。ただし宰相や大勢の御前侍衛を連れているので、庶民という形ではない。

 この旅の途中でも碁を打つ。乾隆帝が黒。盤面ははっきりしない。このままで結果は不明。

 夏紫薇は三本の指で摘むように石を持ち、そっと置く。乾隆帝も同じようなもの。

   …………………………

 第二部にも碁の場面が何度かあった。
 小燕子が乾隆帝と碁を打つ。待ったを繰り返す。小燕子はまだ弱い。
 そのあと五阿哥(事実上、小燕子と婚約中。将来の皇帝候補の一人)とケンカして漱芳斎を出て行ってしまう。宮城の門では門番と乱闘して家出だ。
 文字も満足に知らない小燕子に詩を憶えさせようとするのが無理だった。それが辛いと小燕子は宮を出てしまう。もっとも五阿哥にしてみれば、それができないと宮廷では生活しにくいので必死なのだった。これはこの物語の設定。
 史実ではそんなことはない。有名な西太后の対になる東太后は、字を読めなかった。
 小燕子は宮廷を出た足で、碁会所を見つけ碁を打とうとする。全ての対局は賭碁らしい。

 席に着くとすでに盤上にはタスキに白黒2子ずつ置いてある。
 小燕子が白を持ってまず一手。ここまでは当時のルール通りである。

 向かって、左辺が白黒とも形が不自然だが、全体的には形になっている。左下スミの星には白石があったはず。
 碁会所の老板(主人)と小燕子の対局なので、ここまでくれば、小燕子が下手だと判っているだろう。鴨が葱を背負って飛び込んできたと思ったか。ここで黒番かと思ったら白番だった。石の数が合わない。
 大金をかけて打つが小燕子が勝てるわけがない。熱くなっている間に荷物を盗られてしまう。老板が責任逃れを言うので怒った小燕子は店で大暴れ。なお、盗られた荷物はその碁会所にあった。

 このDVDは横店で買い求めた物。6枚組20元だったと思う。
 一時間番組、正味45分くらいの長さで第一部が24回、2枚組。第二部は48回で2枚組。第三部は40回で2枚組。ただし第二部・第三部は品質は悪く、日本では商品にはならないだろう。

謫仙(たくせん)

(2011.4.18)


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