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棋士仲間から高く評価されていた頃、亀梨先生は魔道の闇にのた打ち回っていたのだろうか。 |
人の世には「節目」というものがある。しかし、人はそれを自覚することはできない。だから、神が人に仕掛けた「運命」と後で気づくしかないのかも知れない。
40年に及ぶ私の人生はまさに碁と共にあった。平成元年に入段、同年二段、翌2年三段、4年四段、6年五段、8年六段、12年七段、14年八段、その間、13年には第31期新鋭戦タイトルも獲った。
しかしその後の9年間をどう位置づければいいだろう?阿含桐山杯や棋聖戦といった高額賞金の棋戦でタイトルやリーグ入りを九分九厘掌中にしたことはあったが、結局は何も起こらなかった。とんとん拍子だった昇段テンポも長いモラトリアムを余儀なくされた。
こうした時間はしばしば「充電期間」と呼ばれる。しかしそれは後付け解釈に過ぎない。人はその渦中にあって、あらゆる辛酸に苛まれ、魔道の闇をのた打ち回るのだ。
ふと、私の唇からミスター・チルドレンの桜井さんのメロディーが流れ出す。メロディーは止まらない。涙も止まらない。いつまでも止まらない――そしていつしか、私は酔いつぶれていた。
“愛は消えたりしない愛に勝るものはない”なんて流行り歌の戦略か?/そんじゃ何信じりゃいい?/“明日へ向かえ”なんていい気なもんだ/混乱した愛情ゆえに友情に戻れない/男女問題はいつも面倒だ(ありふれたLove Story )
夏が終わる大好きな夏が終わる/まるで命が萎んでいくような気がした/普通の日々に引き戻されることが/たまらなくさびしく思えた/孤独な僕とまた向き合っていくことが(夏の日のオマージュ)
悔やんだって後の祭り/もう昨日に手を振ろう/さぁ旅立ちのときは今/重たく沈んだ碇を上げ/覚悟なき者は去れ/あてどない流浪の旅/Nobody knows 航海の末路(fanfare)
大切なものを失くしてまた手に入れて/そんな繰り返しのようでそのたび新しくて/「もうこれ以上涙流したり笑い合ったりできない」と言っていたって/やっぱり人恋しくて(旅立ちの唄)
誰かの呼ぶ声がするけれど/今は答えなくたっていいだろう?/独り言のような唄だよ/君にだけ聞こえりゃいいんだよ/もう少し前へあと一歩前へ(独り言)
花の匂いに導かれて/淡い木漏れ日に手を伸ばしたら/その温もりに/あなたが手を繋いでくれているような気がした/信じたい信じたい/人の心にあるあたたかな奇跡を信じたい/信じたい信じたい/誰の命もまた誰かを輝かすための光(花の匂い)
足音を忍ばせ君の扉の前に立ち/中から漏れる声に耳を澄ましたら/驚かさないようにそっとノックしなくちゃ/ねぇ、そこにいるんだろう?/もう入ってもいいかなぁ?/君のその内側へと僕は手を伸ばしているよ(少年)
初秋の涼風が一筋頬を撫で、ふと目を覚ます。人様に聞かれたら何と年甲斐のないことかと笑われるだろう。「何や、アホくさ!」私は独り赤面して吐き捨てる。そう言えばこのところ、カンサイ弁がすっかり身に着いてしまった。
何でやねん!生まれも育ちも静岡やから、東京と関西の架け橋となるサダメなのやろか。夢の中のミスチルの歌はいつまでも消えない。ひょっとすると何かの予兆かも。そう、ストイックな青春を送ってきた私が永遠の愛の園にいざナわれるとき。季節は、秋の、予感。
亜Q
(2011.8.15)