名人戦第3局の疑問

名人就位式も終わり、今更なのだが、名人戦における私の長い疑問について述べる。就位式については、後日、亜Q氏からの報告があるはずである。

名人戦第3局。いくつもの劫争いも終わり、井山挑戦者が勝勢で終盤を迎えたところだが、挑戦者が右下でミスをし、白の大石の眼がなくなったところである。挑戦者は秒読み、名人はまだかなり時間を残していた。黒231とのノゾいた局面である。私はこのノゾキの意味が分からなかった。その付近に嫌みはなさそうに見えたからである。挑戦者はノゾキを当然のように無視した。最終結果はご存知の通りである。

私はこのノゾキの意味が知りたかったのだが、週刊碁にはその意味は述べられていなかったので、誰もが疑問にも思わないような当たり前の着手かなと思った。しかし、相変わらず意味が分からなかったので、千寿会の場で二人の棋士に質問をぶつけた。二人はノゾキを打たないと上辺に手が生じるのではないかと、時間をかけて調べてくださった。しかし、出てきた結論は手はないということであった。それなら、左のように黒1とコスミを打っていたら、白の大石がとれていたのではないかという話になった。口さがない我々の中には名人は挑戦者に考慮時間を与えないために早打ちしていて間違ったのではないかというものいた。しかし、騎士たちは張栩名人が打ったのだからきっと意味があるはずであるという意見だった。

その後、朝日新聞の囲碁欄で詳細な解説が始まった。私はこの解説で疑問が解けるだろうと期待した。しかし、その部分は素通りだった。さらにその後、ファンフェスタ in 箱根で新たに何名かの棋士に同じ疑問をぶつけてみた。懇親会の席だったのでかなりアルコールが回っていたのもあって、明確な回答が得られなかった。その中で一人の先生から、中央が白2で切れると白4の一線のサガリで右辺が劫になるのでノゾキが必要であるという回答が得られた。そこは何度も読んで、生きているのを確認したはずだったのだが、いわれてみると確かに怪しい感じがした。たまたま隣にいた県代表クラスも頷いていたので、私もその場では納得してしまった(素直な性格なので)。

自宅に戻ってからもう一度確認すると、やはり黒1で無条件生きである。そのことを碁盤にならべて確認していたのだが、そこでやっと気がついた。白のサガリに対して、黒1で確かに生きてはいるのだが、白2ホウリコミから黒に生きを催促すると、白2の下の黒石が抜けるこことに気がついた。そうすると劫残りではあるが、Aに白の眼ができて生きである。ここにきて、やっと疑問が氷解した。えらく時間がかかったものである。張栩名人(当時)はそれを1分もかけずに読んでいたのである。私にいわれても意味ないだろうが、さすがである。

かささぎ

(2009.12.12)


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