ニコニコ囲碁普及

前夜祭に勢ぞろいした歴代本因坊。ただし、生きている人のみ。(ニコニコ生放送からのスナップショット)

十段線の優勝賞金が1200万円から750万円に減額され、碁聖戦に次ぐ七大棋戦の最後尾に序列されてしまった。NHKのBS放送、前回の棋聖戦より午前の放送時間が1時間から30分に半減となっていたが、今回の本因坊戦から午前の放送がなくなった。囲碁界および囲碁ファンには厳しい時代となっている。

このような状況の中で、今回の本因坊戦では画期的な試みがなされた。ニコニコ動画で前夜祭から終局まで完全中継の生放送が行われた。これまでも、挑戦者決定戦などで生放送が合ったが、三大棋戦では初めての中継である。初日は藤沢一就と井澤秋乃のペアで、二日目は三村智保と井澤秋乃のペアで解説行われた。途中昼休みと数回の15分程度の休憩を除いて出ずっぱりである(お疲れさまでした)。コメントを見るとなかなか好評だったようである。

視聴者は最大で8万人ぐらいだった。私の印象では、平日の昼間の放送にしては画期的な数字だと思った。特に興味を引いたのが途中に挟まれた視聴者対象のた。質問の1つは視聴者の棋力に関するもの。正確な表現は忘れたが、設問は四択で、(1)囲碁を知らない、(2)初心者、(3)級位者、(4)有段者である。私の予想では(4)が一番多いと思ったのだが、結果は4つがほぼ同じ割合だった。もう1つのアンケートは視聴者の年齢層。(1)20台以下、(2)30代、(3)40代、(4)50代以上。結果は何と(1)の20代以下が50%強。残りは3つの世代がほぼ拮抗していた。平日の昼間なので、30代と40代は少ないだろうとは思っていたが、50代はもう少し多いだろうと予想した。しかし、そうではなかった。一番時間があると思われる50代超だが、ネットに不慣れなこともあり人数が少なかったのだろうか。あるいはネットアンケートに気軽に答えるという習慣がなかったのかもしれない。

2つのアンケートの結果から単純に計算すると視聴者の中で20代以下の囲碁を知らない人の割合は8分の1であり、視聴者の人数から考えると約1万人がそのような人であるということである。これは大変大きな数である。ニコニコ動画でそれまで囲碁を知らなかった1万人に囲碁普及ができたということである。

今回、特に今回に限ったことではないが、残念だったことは対局が平日に組まれていたことであった。平日の昼間で8万人に視聴があったということは、もし、土日に放送があれば、その数倍の視聴があったことだろう。土日ではなくとも4時間ぐらい対局を後にずらし、勤め人が家に帰ってから見られるようにすれば、少なくとも倍ぐらいの視聴者が期待できたのではなかろうか。

テレビでの放送もなく、ましてやネットもない時代では水、木の対局もよいかもしれないが、新聞も読まない、テレビも見ないネット世代への囲碁普及のために、対局日時を再考するときにきているのではなかろうか。

かささぎ

(2012.5.22)


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