小沢一郎の碁

勤務先の窓際で暇を持て余した時の友達は雑誌と週刊誌。横文字を含めて経済、ビジネス系の硬いものばかりなのが残念だが、仕事をしているふりをしながら息抜きできるのがいいところ。もちろん難しい話はすっ飛ばしてイチロー、マツイやらわが母校の就職率・大学合格率ランクやら、東大女子学生の6割は美人説やらを好んで読んでいるのだが、思いがけず碁の話に出会うこともある。何だかとてもトクした気分。このページで時々ご紹介するのは、惜しみなく愛を与える性格の私からのちょっとした“おすそ分け”と受け止めて欲しい(決して“見せびらかし”ではありません!)。

そして今回は今の日本で最も“時の人”とも言うべき民主党新代表の碁。『エコノミスト(日本語版)』5月9日号の編集後記に、H記者が以前在籍していた雑誌の囲碁欄(おそらく『財界』の小川誠子プロの指導碁対局)を担当していた頃に取材した小沢さんの打ち方に触れていた。

さて、小沢一郎氏の碁は次のどれでせう?とりあえずキーワードは下記から選んで下さい。「剛腕」、「創造」、「破壊」、「柔軟」、「堅実」、「器用」、「不器用」——。

結果は4子の置き碁で小沢氏の6目負け。棋譜をつけた観戦記者によると、「まじめで堅実、時には不器用な手もあった」とのこと。H記者は「岩手が生んだ頑固者の姿が浮かんでくる」と総評し、小泉純一郎氏との「小小戦争」で小沢氏がどんな手を打つのか、両者の石が接触しないまま終局する碁はないから最後は必ず激しい接近戦になると予想している。

4子局でジリジリ追い上げを食らい、数え碁にして6目もの差をつけられるのは私には我慢できない。①途中で読み間違えて形成を損ない、どこかで勝負手を打って自爆する(ケンジさんとの碁に多い)②かなり終盤まで優勢を維持して相手が多少無理気味に勝負してきたのを咎めきれずに逆転される(以前かささぎさんが紹介してくれた千寿先生との指導碁はこれ、セーケンさんともこうなることが多い)③実力のなさを少しずつ露呈してジワジワ迫られ、ほぼ地合いが並んだ時点で投了する(ジョー、最近のナルミさんとの碁など)——の三通りしか私の辞書にはない(勝つことは想定外)。

こう考えてくると、小沢さんはかなり忍耐強い方ではないだろうか(それとも目算が苦手?)。講評の書き方から見て「堅実」より「実直」の方が近いような気がする。せっかく雑誌に掲載されるのだから行儀良く、淡々と最後まで寄せられたのだろうか。フーム、碁と人格との間にどのぐらい相関関係があるのだろう。

そんな疑問を残しながら、八重洲の日本棋院が新装開店した頃2度ほどお目にかかったハマコー(浜田幸一)元衆議院議長を思い出した。彼は一人でフラッと立ち寄られるらしい。つかまえた相手と超早碁を打ってすぐに次の相手を探す。棋力は『週刊碁』の人気者「すごもりくん」=二段ぐらいらしい=かな。やたらケンカ好きですぐにくんずほぐれつの碁になっていた印象がある。私も知人と待ち合わせをしていた時に目が合い、「お若いの、俺と打たんか」とあのギョロ目(論戦のときは怖いがこの時は優しい目でした)で誘われた。以心伝心、「待ち合わせているので」とお断りしたが、今では打ってみればよかったと後悔している。

政界ではこのほか、民主党の菅代表代行、渡部国対委員長、自民党では与謝野経済財政金融相(もちろん、関西棋院理事長の塩川爺も)らが打たれると聞く。チーママ〜、どなたかお呼びしませんか?

亜Q

(2006.4.25)


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