ペア碁体験

ベンヤミン君
手前右側がかささぎ

昨年の国際ペア碁大会をペアがいないバリー君とともに、寂しく見ていた私であったが、こんな恵まれない私を哀れんでか、ある女性から奇特にもペアを組んでもよいという申し出がありました。そういうわけで、早速、ペア碁大会に申し込みました。今年度から、申し込みのシステムが一部変わり、ハンデ戦の方にも地方大会が導入され、優勝チーム(関東甲信越ブロックだけは3位まで)に本戦の優待出場権が与えられることになりました。それ以外は今まで通り、先着順で申し込みが受け付けられます。そのような理由で、我ペアは練習も兼ねて、本戦への優待出場権を獲得すべく、9月28日に日本棋院で開催された関東甲信越ブロック大会に出場してきました。

ハンデ戦では、ペアの棋力の平均を基に置き石の数が決まります。私の相手は6級で−5P(ポイント)になり、私は5段で5Pとなります。したがって、我々のペアは0Pになります。大会はペアの棋力によって、A、B、Cの3グループに分かれて4回戦スイス方式で行われました。Cグループは0P以下のペアで、一番気力の低いペアは−7Pでした。まず抽選で1回戦の組み合わせが決められ、我がペアの相手は−1Pのペアでした。手合いは白番で逆コミ5目半です。

私のパートナーはどうも相手の手に付き合う傾向があるようです。急場で相手が手を抜いて大場に打つと、それに付き合いますが、私は無視して、急場を打つ。これを2回繰り返すと、さすがにパートナーもそこが重要なところだと気がつき、合わせて打ってくれるようになりました。棋譜から分かるように(ペア碁では、棋譜を後から書くのもかなり大変です。なにせ、自分の手番が4回に1回しか回ってこない。しかも、パートナーの棋力のため、途中に脈絡のない手が度々出てくるし、かろうじてこの碁だけ少し覚えていました。)、しばらくして、相手の右辺の大石と右下の白の5子が振り代わりになりそうになった。石の捨てられないパートナーに対してひたすらに捨てろ捨てろと念力を掛けた甲斐があって、右辺と振り変わりました。とはいっても、右辺を取りきるまでには、紆余曲折がありました。通常の対局では念力を掛ける相手は対局者の一人だけでよいのですが、ペア碁では3人に念力を掛けなくてはならなく、疲れは一気に3倍です。

一局目の棋譜
1回戦の棋譜

この対局、パートナーの着手には打ちすぎのところがかなりありましたが、相手もその気迫に押され、ことごとく受けてくれたので助かりました。棋譜のパートナーの白3に対しても、黒4と丁寧に受けてくれたので助かりました。しかし、私の打った白5が、振り返ってみると良くない手でした。ここでは、下辺の石にぺたっとツケて、先手を取って左辺の星下の石にボウシするぐらいで十分でした。そのときは、棋譜のようにお互いに跳んでいけば、左辺が割れるので良いかと思っていました。が、パートナーが跳び跳びで内側に封鎖されるのが不安になったのか、我慢できずに、白13のツケ。この辺から怪しい雰囲気が漂ってきます。

黒16に対しては、白18と切って振り替わるしかないかなと思っていると、白17。しょうがないので、白19のツギ。相手は当然黒20のキリ。ここで、パートナーは何と白21と反対側からのアテ。ついにこちらの我慢も限界に達したか?いえいえ、これぐらいで切れているとペア碁は打てません。黒のノビに、ぐっと我慢して、11の上にツギました。この後も、いろいろありましたが、何とか勝たせてもらうことができました。

2局目、相手は学生ペア。女性は囲碁を覚えてまだ3ヶ月ということで、相手ペアのランクは−7P。計算だと7子局になりますが、いくら差があっても5子局までという、大会規定によって5子局での対局です。この大会に参加するまで、少しペア碁の練習をしてきたのですが、そのときの手合いはいつも互先でした。5子局なんて、全く想定してませんでした。打っても打っても、なかなか追いつきません。ところが、左上隅に対してパートナーが打った2線の下がりに対して、相手の女性が手を抜きました。しめしめ、ここで、三三に打ち込むとそっくり隅が死ぬ可能性が高いなと思っていたら、なんと、我がパートナーが相手の手に付き合ってしまいました。そうです、私の手番だったのです。罰則の3目を相手に渡し、しかも、相手に手入れされ、踏んだり蹴ったりです。しかし、実はそのとき、何故か、私もパートナーの手番だと思っていたのでした。いらないところで、パートナーと考えが一致してしまいました。

ここで、よほど投げようかなと思ったのですが、相手の女性も初心者なので、何があるか分かりません。もう少しがんばってみようと思いました。左下隅を内側からノゾキ、内側で生き、かなりの利益をあげました。しかし、おかげで、外側が薄くなり、20目ほど取られてしまいました。こんどこそ、本当に投げようかなと思ったのですが、毒をくらわば皿まで。今度は、全く手がない右下に、相手の間違いだけを期待して打ち込みました。手のないところなので、パートナーの頭は完全に混乱しています。しかし、相手の女性もそれ以上に???だったらしく、右下をそっくり取ることができ、40目ほど儲けました。その後、再び薄味をつかれ少し足りなくなりましたが、最後は相手女性が、勘違いをして、生きている石に手を入れ続けたため、右上が死んでしまい、相手の投了となりました。本当にジェットコースターに乗っているような碁でした。

3局目、2子局の白番。結構まともな碁でした。中盤でわずかなリード。あと、右上を荒らせばと、大ゲイマに開いた隅の星にツケました。相手は外押さえ、パートナーにとっては初めての形らしく、なんと、キリチガイ。相手は当然、星からのサガリ。局面は、外勢を張っても全く役に立たないところ、しょうがなく、下からアテて、生きを謀りました。当然、相手の1目は逃げ出すものと思いましたが、何とその石から3路横に打ってくるではないですか。ここでも、誰かが言った「相手の女性は味方」を実感しました。裏を返すと、「パートナーは敵」ということになりますが、さすがの、我がパートナーも間違うことなくポン抜いて、後は紛れることなく、勝ちました。

4局目、ここまでで、全勝は2ペアだけになり、この対局に勝てば優勝です。相手は−4Pで4子局。序盤で、押さえなければならないところで、パートナーが手抜き、一気に苦しくなりました。どこまで打っても4子の差は縮まらず、戦うことさえさせてくれません。相手はひたすら手堅く、つけいる隙がありません。手合い違いを感じさせる1局で、完敗でした。

順位は、表彰式まで知らされず、そこで初めて、準優勝だということが分かりました。なんとか、目標の11月の本戦の優待出場権を手に入れることができました。パートナーが打つ手をはらはらしながら見守り、一喜一憂した一日でした。私も、かつては気が短かかった方ですが、結婚してから??年、妻と子供に鍛えられたせいか、おおらかな気持ちで打つことができるようになりました。今回、初めてのペア碁体験でしたが、大いに楽しむことができました。いろいろ書きましたが、次回もよろしくお願いします、パートナーさん。

かささぎ

(2003.10.3)



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