「ポン抜きゲーム」は「碁」だろうか?

                      K(さいたま市、男性)

碁を知らない人や子供にも手軽に覚えてもらう有効な方法として10年ほど前から「ポン抜きゲーム」が提唱され、全国的に展開されていますが、最近その実効性について感じることがあり、皆様のお考えを伺いたく投稿させていただきます。

碁の原理はきわめてシンプルですが、奥が深い。これこそ、碁が知的ゲームの王様たる由縁だと思いますが、その半面とっつきにくいし、なかなか上達しない。普及活動はまさに縁の下の力持ち役であり、尽力されている方の労苦がしのばれます。特に知的障害者や幼児向けに独特の「安田メソッド」を編み出し、全国で展開されている安田泰敏九段にはかねがね敬意を感じております。

ところが最近、「アルプス囲碁村」を掲げる長野県大町を訪れた友人から気になる話を聞かされました。確かに現地の子供たちや指導者の方々はポン抜きゲームは覚えたけれど、「碁」は打てない。どうやら、ポン抜きゲームと碁の間に深い溝があるようなのです。

ポン抜きゲームは、天元中心に黒白2子ずつ交差させ、先に相手の石をポン抜いた方が勝ちという遊び方が最も基本的なルールだそうです。確かにこのゲームは、石が接した時の読み比べの楽しみを教えるとともに碁石や碁盤への愛着も養わせると思いますが、右脳と左脳をまんべんなく使う本来の「碁」とはどうも別のゲームではないかという疑問を感じるのです。

日本では碁を嗜む人口が減少傾向にあり、国際的な主導権も韓国等に奪われつつある中で、碁界関係者の間では棋院改革案や普及活動の促進策などが論じられているようですが、「ポン抜きゲームを広めればそれでいい」と思い込んでいると、とんでもないことになりそう。少なくとも、「ポン抜きゲーム」からスムーズに「碁」に移行する洗練された方法論が必要なのではないでしょうか。

(2001.7.12)


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