幸子の幸

藤沢秀行偲ぶ会で

1月26日、年初めの千寿会の講師は原幸子四段、黄金色の和装でお越しいただいた。ご存知の通り、名人、十段、碁聖、NHK杯など多数のタイトル獲得者・依田紀基九段の良き伴侶。11歳を頭に男ばかり三人の子宝に恵まれ、棋士、妻、母親の三役に加えて依田塾の塾長代行としても活躍されている。

NHKなどの番組で聞き役上手をうたわれた幸子四段の講師ぶりは流れる如く。二子、三子で挑戦する自称強豪を相手に6,7局の指導碁をこなすと、殊勲の金星を挙げられたJさんとの対局を大盤解説。「瀕死の白の大石をお情けで逃がしてもらいましたが、それでもしっかり負かされました」とJさんを目一杯称えた後、会場近くの飲み屋で恒例の反省会にも付き合われた。

飲み会での話題はご自身のことよりもっぱらご主人と三人の息子さんばかり。依田九段が最近3ヶ月ほどの間に20kgもの減量に成功されたのは、愛用していた自転車がすぐにパンクするためウオーキングに切り替えたのが勝因だったこと。11歳になるご長男の太陽君は碁を勉強する傍ら少年相撲大会で見事優勝。料理にも才能を発揮して毎日のようにお得意のミネストロフ(だか何だか)を大鍋でつくるので料理がどんどん余ってしまうこと。太陽君がそれを一生懸命食べるため、体重の十の位(8?)が依田九段と並んでしまったことなどをご披露して席を盛り上げていただいた。

話はさらに依田塾や依田ブログに及び、内容が激しいためか時折棋院から削除されるらしいことも初めて知った。巷間定説となっている「小学校時代の成績がオール1」は間違いで、1教科だけ「2」だったそうだ。これに猛反発されたのが、千寿会の論客たくせんさん。「ブログの文章を見れば劣等生だったなんて考えられない」と激高。もちろん私も激しく同意。棋士、それもトッププロになれるような人なら、どんな教科だってその気になれば一番になるだろう。そうした稀有な才能・資質を見落として劣等の烙印を押すなら、教師失格どころか体罰以上に悪質ないじめではないかと思えてしまう。

ご家族の話をされる幸子四段の顔をつくづく仰ぎ見れば、狩野芳崖やら長谷川等伯やらが描きそうな慈母観音の趣がある。「幸子の幸」の結晶かもしれない。

亜Q

(2013.1.29)


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