澁澤真知子教室訪問記・上

 連休最後の5月6日は薫風ならぬ緑滴る強い雨だったが、こんな時こそ囲碁日和。当サイト管理人のかささぎさん、元文壇名人2期のチカちゃんこと濱野画伯、そして私(亜Q)の千寿会有志3人がうち揃って、碁界で最もキュートな澁澤真知子女流棋士の囲碁教室を訪問した。

 京王井の頭線高井戸駅から環状8号線に沿って南へ歩いて7、8分。ミサワホーム研究所先の角を左に折れてすぐ右手に森の中の喫茶室にも見える瀟洒なたたずまい。奥の母屋から道路に面したスペースには車が3台置ける駐車場と母上の澁澤啓子さんが経営される施療院「高井戸治療室」。その2階に木の幹に彫り込んだ「囲碁」という看板。そこが真知子さんの囲碁教室だった。

 ドアを開けるとおだやかで心地よい木の香りに体が包まれる。鍼灸のほか、アロマテラピーや光線療法、マイナスイオン療法などを手がける母上が真知子さんのためにムク(椋)材をふんだんに使ったコテージ風の教室を設計された。中はこじんまりとして、碁盤6、7面ほどでいっぱいになりそう。高い天井には1本の太いムク材が縦貫し、そこから馥郁(ふくいく)とした香りが醸し出されているようだ。

 健康に気を使った珪藻土の白壁に、机やいすもすべて手作りのムク材製。職人気質の大工さんが釘をほとんど使わず精妙にはめ合わせながら、ほとんど一人で1年かけて完成させたのだと言う。こんなに無垢で安らぎを感じさせてくれる囲碁教室を私は初めて見た。お人柄をそのまま反映されたような、いかにも“澁澤真知子の教室”だった。

 日曜日の午前の教室には、小学校2年生の女児と3年生の男児とそれぞれの父親の親子二組が、大人同士、子供同士で打っていた。我々3人は真知子先生を交えてさっそくペア碁(真知子先生&チカちゃんvsかさぎさん&亜Q)を開始。この碁は大石同士が絡み合ってしのぎを削り合うとても面白い碁だったが、その間にも先生は二組の碁をながめ、やさしく明快にポイントを解説されていた。子供さんの碁が終局すると、「ちゃんと整地して1目ずつ勘定してごらんなさい」と今度は厳しい調子。父親同士はそ知らぬ顔で自分たちの碁に興じている。

 私はつくづく4人の親子が羨ましかった。小さいうちからプロの先生に教えていただく喜びを子供に経験させ、そして自分も子供と一緒に囲碁教室に通う——。父親としてこれ以上の満足はあろうか。でもいずれも私にはできなかった。嗚呼、間違いだらけの我が子育て人生!そんな葛藤に打ちのめされながらも常に風雅の道を忘れない私に、オリジナリティーに満ちた名句が浮かんだ。題して“真知子教室訪問記念日”。

「真知ちゃんを先生と呼ぶオジサンが 集う高井戸・澁澤真知子教室」(字余り)

(続く)

亜Q

(2007.5.8)


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