指導碁考(その1)

                      K(さいたま市、男性)

プロ・アマを問わず、3子までの置き碁は「勝負」に近く、4子以上になると 「稽古」つまり指導碁の意味合いが強くなる。勝負より教育効果が眼目だから、 上手も下手も自ずと打ち方が変わってくるのではないか。 (1)置石の数(2)対局停止のタイミング−−について、この場をお借りしてささやかな 体験に基づく私見を俎上に置き、皆様から忌憚のないご意見などをいただければ幸いです。

1. 置き石の最適数;

碁の段級位ほど当てにならぬものはない。プロの段位はともかく、 アマの段級位はプロ棋士と打った場合のハンディを換算すればわかりやすいと思う。 もちろん、プロ棋士にも強弱があって2子ほどの差があるとの説もあるが、 指導碁を受ける並みのアマの立場から見ればトッププロも若手の低段棋士も大差はない (教え方の差はもちろんあるが)。現行の日本棋院免状ランクから見て、 プロ(全国レベルのトップアマを含む)はアマの十段に相当すると思う。 県大会などの常連クラスは八〜九段。プロに3子で入れば天下六段と言うより アマ七段に相当するのではないか。アマ五段なら5子、初段ならば星目が妥当。 それでも名誉と賞金を賭けて1対1で戦えば、アマが勝ち切るのは容易ではないだろう。

ただしプロ棋士から教わる場合、指導碁は「勝負」ではないから、 教育効果から見れば1子程度少なく置く方がいい。言うまでもなく、 プロは指導碁で勝つために力を尽くしているわけではない。2〜4面程度の多面打ち、 しかもほとんどノータイムで打つからそれで結構いい勝負になる。

千寿会では小林千寿先生はそれよりさらに置石を1子減らせと奨励している。 下手は甘えを捨てて厳しくいかざるを得ないから、石が張る。 上手を怖がる性癖も直っていくそうだ。事実、私と棋力互角の好敵手は この教えを忠実に守って私より1子少なく置き、しかもたまに入っているが、 1子多く置く私はプロにはなかなか勝ち切れないでいる。

アマ同士の置石数は、基本的には上手の指定に従えばいい。 4子以上の実力差でも、黒で打てと言われれば、ありがたくそうすればいい。 この場合、途中で頻繁に並べ直すことになり、終局まで進むことはまずない。 勝ち負けなぞ、初めから考えるべきではない。

実力差に応じた置石の場合、たとえ星目であっても勝ちたくなるのは 上手も下手も同様だが、やはり指導碁であることは念頭に置いておきたい。 どちらかの大ポカで碁が壊れてしまう場合はそこで打ち直して 「本来こうなるはずの道」をたどるべきだろう。 その際、上手は自分の無理手を率直に開陳してなぜそう打ったかも含めて 下手に説明してあげるべきだろう。

(2001.10.29)


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