男 Shinjo のシンジョー

プロ野球の売り物企画、セパ交流戦のスタートに合わせたように、日本ハムのShinjo選手が颯爽と襟付きアンダーシャツを披露した。審判団は当然野球規則に詳しいから、どこかの条文に「襟付きシャツは禁止」とあったのを思い出した。規約がある以上守らせるのが務めだから、「今日はいいけど明日からはダメ」と大岡裁きを見せて問題を片付けようとしたらしい。

ところがShinjo選手の真骨頂はここから。翌日も平然と襟付きシャツで登場、当然のように出場停止処分を受けた。そして試合終了後の記者会見で「野球選手はもっと自分の考えを持って、行動してもいいのではないか」と、審判団やプロ野球機構ではなく、同じ選手仲間に呼びかけた(事実関係やニュアンスが多少異なるかもしれないけれど大勢に影響がないと思われるので話を続けます)。

彼と同じ立場に立つなら、「そもそも襟付きシャツのどこがプレイに影響するのか」、「条文に書かれているからダメと言うなら、書かれていないこと(例えば茶髪・ピアスやスパイクのデザインなど)ならいいのか」、「この程度のことはサッカーの審判員が実行している“スルー(黙認)”の方がスマートではないか」、「時代は変わっているのに、昔作った規約を杓子定規に運用しようとするのは愚かしい」などと言いたくなる。“してはいけないルール”の限界や審判員の規則運用にこそ問題があり、この程度のことは目くじらを立てずにオトナの解釈をすべきではないかといった現実の対応に話がいきそうなのに、Shinjoは重大決意を胸に一気に「選手への遺言」へと突き進んだ。

Shinjoの言動はいつも意表を突く。プロ野球機構傘下の選手が何人いるかは知らないけれど、全員の自覚を促すために(もっと重大そうな問題がたくさんありそうなのに)唐突に襟付きシャツを引っ張り出したところがいかにも彼らしいが、それにしても「今シーズン限りの引退表明」まで飛び出すとは——。ま、ここは男Shinjoの心情(あるいは信条)を信じよう。

ところで、プロ野球選手と言えばプロ野球機構に属する組織構成員であると同時に一国一城の主でもある。それぞれの地位や立場、目的や人生観などに応じて、同じ選手同士でもかなり利害が異なる可能性があるから、普通の会社員や公務員などよりまとまりにくいかもしれない。

同様な立場にあるのが棋士だ。将棋界では最近、瀬川アマのプロ入り問題や名人戦スポンサー問題なども絡んで選手会が集まる機会が多いようだ。普段はライバル同士の棋士達がどのように意思統一を図り理事会とともに改革を進めていくか、今がまさに正念場。

将棋に比べて棋士数が2倍以上と言われる囲碁界も改革は道半ばのようだ。中国や韓国との国際競争・協調への対応も必要だから、将棋界以上に重大な時期を迎えているのかもしれない。6月末には棋士の評議会や理事を選ぶ選挙が予定されている。前理事長の遺志を継承してどう改革を進めていくかは、Shinjo選手が言う通り、きっと棋士一人ひとりの自覚によるところが大きいのだろう。

亜Q

(2006.5.14)


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