短期集中合宿で「石の方向」を鍛えてほしい

私が子供のころテレビで見た巨人vs国鉄開幕戦、後に400勝投手になった金田投手と立教大学からプロ入りしたばかりの長嶋選手の対決を今でも鮮明に覚えている。金田の開幕第一投と言えば、大きなスローカーブが定番だったが、この時は内角高めの剛速球一本槍。長嶋のバットがくるくる回ってあえなく4打席4三振。オープン戦では快打を連発していたのに、いざ実戦になると大エースとルーキーの格の違いを見せつけられた。

かささぎさんが出題された「耳赤・恥の一手」では、私は5打席5三振。バットに球がかすりもしなかった。しかし長嶋選手は偉い。対国鉄第2戦からすぐ立ち直り、この年の打率は3割を超え、本塁打・打点、さらに盗塁王にもなって(うろ覚えです)新人王に輝いた。この見事な巻き返しを、すでに人生の峠を越した私が実現できるだろうか。

長期にわたってじっくり鍛え直す余裕はもちろんないから、短期集中して強力なカンフル剤を注入するしかない。では、どんなカンフル剤が効くのか。今さら定石や基本手筋を仕込み直しても到底間に合わない。詰め碁やヨセの勉強を強制的にさせられたら碁が嫌いになるだけ。やはり実戦か。でも、これだけ「耳赤・恥の一手」で痛めけられると、迷いばかりが増幅して真理の森をいたずらに彷徨することになりはしないか。

麻生さんが間違えそうな難しい漢字を使ったら妙案を思い付いた。そう、「石の方向」。これなら忘れる可能性は少ないし、眠くなることもない。でもどうすれば納得のいく成果を上げることができるか。ザル碁同士で議論し合っても絶対に結論が出ない。それどころか、凡愚の私は仲間とけんかしてしまいかねない(泣かされるのはいつも私なのだ)。

定石、手筋、詰め碁、ヨセ。これらはいずれも適当な棋書さえあれば独学できる。基本的に教わるものではないと思う。しかし「石の方向」となると、100年経っても気がつかないことはままある。しかし自分の欠点をズバリついた素晴らしい問題と的確な解説と回答を与えられると、その場で半目ほど強くなった気さえする。即効性・納得性が抜群なのだ。この際くやしいけれど、「かささぎさん、いい問題を出してくれてありがとう」と男らしく言っておこう。

でも「耳赤・恥の一手」は(いろいろな方の回答を待つから仕方がないのだが)少しばかりまだるっこい面もある。もっと密度を上げられないか。それには短期集中合宿訓練こそ好ましい。講師はプロの先生でなければならないが、インストラクタークラスの助っ人がいた方がもっといいかもしれない。大会とか親睦碁会と違ってこれは一種の教育だから、教える側はお客さん相手の甘やかしは捨て、厳しく教育効果を上げなければいけないし、教わる側は昔の受験生の頃を思い出して気迫を持って学ばなければならない。受講生のレベルもある程度そろえる必要があるかもしれない。

日本棋院も関西棋院も、これまでの1泊か2泊程度の総花的な「セミナー開催」に代え(もちろん存続しても構わないが)、短くとも5日間程度の合宿教育を始めてもらえないか。何より、短期間でそれなりの効果を実感できる実利性が100年に一度と言われる国際的な経済不況の時代にふさわしい(ちょっとこじつけかな?)。全国2,3か所で年2,3回定期的に開けばリピーター愛好者が増えていくのではないか。こうして私はいつの日か、かささぎさんに「恐れ入りました」と言わせてみせるのだ。

亜Q

(2009.2.8)


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