チーム編成の妙その2

日本勢が本来の実力を見せた今年のCSK杯について、 関西棋院的掲示板で打出の小槌さんと結城聡鶴聖の面白い報告を読んだ。 戦いの前夜、5人のメンバーをどういう順番にするかで話し合ったというのだ。

団体戦の編成に際して、まず考慮するのはメンバーの序列。 大将、副将以下並べるなら、年齢や棋士としての貢献度等を勘案して加藤、依田、結城、羽根、山下となる。 しかし、団体戦では想定される相手メンバーとの相性や、黒を持ちたいか白を持ちたいかがそれ以上に重要になる。 そして戦い前夜、団長の工藤、主将格の加藤、中堅結城を中心にチーム編成会議が開かれたらしい。 無頓着な依田名人はおそらく長い風呂にでも入っていたのだろう。

作戦会議では、「誰と打ちたいか」については相手のあることゆえあれこれ考えても仕方がないとして、それより黒番か白番かが議論されたらしい。 コミは6目半、加藤は白番、結城は黒番(山下は3回戦の前に黒番を表明)、羽根は「どちらでも」。 依田は欠席裁判になるが、もともとどちらでもこだわらない性格、後で決定事項を伝えればいいと、私でも考える。

その結果、1回戦の台湾戦は大将加藤、副将依田、三将山下、四将羽根、五将結城。 2回戦の韓国戦は大将加藤、副将依田、三将羽根、四将結城、五将山下。 3回戦の中国戦は大将依田、副将加藤、三将山下、四将羽根、五将結城(ただし1回戦は打ち出の小槌さんの投稿からの推定)。

面白いのは、各国のメンバー順がほぼ予想される3回戦で大将と副将を入れ替えたことと切り込み隊長格の結城が謙虚に(あるいはちゃっかり?)四将、五将を受け持ったこと。 メンバー同士で敷居を設けない団長工藤と主将格加藤の温厚・リベラルな人柄、何でも受容する依田の大人ぶり、名参謀の資質を窺わせる伸び伸び結城、物に動じない自然体の羽根、臆せず自分の意見を率直に表明したらしい最年少の山下――まことに独りよがりではあるが、日本勢の勝利を演出した作戦会議の風景が目に浮かぶような気がする。

団体戦ではこうした正々堂々たる盤外作戦がかなり結果を左右するのではないだろうか。 その意味からも、自由闊達、かつ腹蔵なく自分の意見をぶつけ合うことが出来た今回のメンバー編成は最適だったような気がする。 惜しむらくは、大竹に代わる現代碁の美学を代表する世界の最高峰、覚不在の一点であるが。

亜Q

(2003.5.5)


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