時間つなぎ①「不失花」

何かの場で突然生じた空白に耐えられないところがある。「耳赤・恥の1手〜そよ風編」がスタートしたばかりのアクシデントで中断されてしまうとどうも落ち着かない。小学生の頃、教育実習に来られた教生の先生(教育学部の大学4年生)が授業中に立ち往生されると、頼まれもしないのに進行役代わりのサクラ質問をしてみたり、長ずるに及んでも周囲の失笑を覚悟で“最初の一歩”を踏み出したり、こんなおっちょこちょいの小心者では大成するはずがない。と言って、うまいラーメンを食うために行列を並ぶのは平気なのだから、せっかちなわけでもない。つくづく因果な性格を持ち合わせてしまったと思うが、今さら直りっこないとあきらめている。

碁に喩えれば「時間つなぎの悪手」。幸い、私と似たところがあるかもしれないたくせんさんが「ヒカルの碁」をアップしていただいたが、私もあれこれヤボネタを考えてしまった。いったん考え付いたダジャレはその場で披露せずにはいられない性分、皆様のご迷惑を顧みず2手ほど“時間つなぎ”を打たせていただく。まずはチーママからうかがった山下敬吾棋聖就位式の光景から。

第33期タイトル戦を制して棋聖4連覇に輝いた敬吾さんの就位式は4月17日ホテルニューオータニで開かれた。チーママが出席者名簿に記名していると隣に恰幅の良い和服姿。何と、依田紀基九段。挑戦者と言うより敗者その人。チーママは「これは凄いこと!!!」と「!」を大盤振る舞いされていたが、昨年2月に開かれた第55期王座就位式にはやはり挑戦者(敗者)の今村俊哉九段が祝辞を述べられていた。その時敬吾さんは「自分も敗者の立場になったら、先輩(今村九段)に倣う」と言われたと記憶しているけれど、ウックンにタイトルを明け渡した第56期王座就位式(今年2月)には出席されたのかどうか、御存じの方がおられたら教えてください。

敗者が勝者を祝福するのは、傍から見ていても気持ちがいい。今村、依田両者のさわやかさと同時に、祝福される側の敬吾さんもきっと素晴らしい人柄の持ち主なのだろう。サカタ・シューコー・タカガワら昭和の名棋士がしのぎを削った頃、そしてチクン・コーイチが覇を競った少し前までこんなことはなかったのではないか。ま、それはそれで勝負師の気合が感じられて悪くはないが。

会場には棋聖令夫人の聖子さん、そしてその母上も出席されていた。ところが何と、貴公子こと高梨聖健八段の姿が見えなかったらしい。多忙かどうかは知らないけれど、どことなく貴公子らしさがうかがえるようで私にはちょっと面白い。皆さんはいかがですか?

会場では棋聖が揮毫された扇子が配られた。書は「不失花」。読んで字の如く、「いつまでも花を失うまい」との心意気をしたためられたものと拝察するけれど、高校は男子校、大学も男ばかりの学科に入った硬派の私がエラソーに申し上げれば、「花」の代わりに「志」とか「夢」とか「錦」といった外に見える“形”を表さない字、せいぜい「華」ならわかる気がするが、形が見える「花」はどことなく違和感、と言うより“女性の匂い”を感じたりする。もちろんこれは私固有の邪推。それは絶対わかっています。

ひとたびツボに入ると、妄想がどこまでも広がるのが私の数少ない欠点の一つ。もしかしたらこの「花」は、敬吾さんが憧れる女流棋士を指しているのではないか。その女流棋士が自らの「花」をいつまでも枯らせずにいて欲しいーーとのメッセージが仮託されていたなら、これは凄い発見ではないか!

となれば対象となる女性は誰か。語の意味からすれば当然敬吾さんより年上。きっと新旧のタイトル経験者、既婚者かもしれない。独善流ザル碁の私が忌憚なく推察すれば、①Jリーガーの夫が移籍して最近静岡あたりに引っ越されたY.Uさん②俳優を夫に持つT.Oさん③世界を雄飛して活躍される子連れ女性のC.Kさんーー。このお三方に「本命」「対抗」「穴」のマークを付すのは、私の新発見にご同意をいただくごく一握りの超変人諸兄にお委ねしたい。

亜Q

(2009.4.23)


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