プロとトップアマが琴線に触れ合う~2014年打ち初めから

2014年打ち初めの千寿会ゲストは、棋士と常務理事との二束のワラジを履いて今や日本棋院きっての働き者との噂もある久保秀夫六段と、押しも押されぬトップアマの一人、木下暢暁(ながとき)さん。京都大学時代は坂井秀至元碁聖の1年先輩としてあまたの学生チャンピオン戦を競い合い、現在は理化学研究所の研究者。高段者を自称されるかささぎさんは職場の先輩だが、囲碁クラブ活動で相変わらずビシビシ痛めつけているらしい(参考)。新年早々のNHK囲碁番組「囲碁フォーカス」では三人団体戦の準決勝進出チーム(昨年は優勝)の主将として紹介されていたから、前髪が突き出たかわいらしい童顔(あれで41歳!)をご存知の方も多いだろう。

久保秀夫六段−木下暢暁アマ(定先)141手打掛け
94 (86) , 123 (107) ,141 (7)

新春1月11日のサプライズイベントは、このお二人の対決(持ち時間は特に設定せず、木下さんの定先)。大盤解説は千寿師匠、石並べは最も若い会友、村田真生(音楽家)さん。対局は左隅小目の白に1間高ガカリした黒をケイマに挟み、黒の3−三下ツケ、白2間ビラキの流行りの定石から端を発して新しい形が出現、両者の石が競り合いながら全局の戦いに及んでいくプロとトップアマの面子をかけた熱戦。大盤解説とお二人の感想を付き合わせると、黒がやや打ちやすい流れが中盤で微妙に逆転して終盤に差し掛かった140手を過ぎたころ、絶妙な打ち掛けとなった。愚生には、黒が目いっぱい忙しく立ち回り、白が時折手を抜きながら大場に先行していく、いかにもプロアマ戦らしい粋を堪能させていただいた。

ところが話はこれで終わらない。会が退けた後、千寿先生も参加された恒例の飲み会で、久保六段が木下さんに"定期戦"を呼びかけたのだ。久保プロにとって木下アマは"向こう先"の手合いかもしれないが、3歳年上の同年輩の彼とどこか気が合ったのだろう。「木下さんと打てば、雑務にかまけてついつい疎かになる勉強心が沸いて来る」と言えば、木下さんもにっこりと「ぜひお願いします」と返す。ザル碁同士の対局では「二度とこの人とは打ちたくない」と思うことがある半面、逆に初対面の相手と手談を交わした後、「ぜひともまたお相手願いたい」と切望することもある。まさに"琴線に触れる"、これぞ碁の醍醐味と言えるのではないか。もしかすると、プロとアマの胸の内で「ポロン」と琴の音が響いたのかもしれない。

亜Q

(2014.1.13)


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