亜Qの迷宮~その1(白1~白27)

 「ハングリーであれ、愚かであれ」――と学生たちに説き、常人の何倍もの充実した人生を先ごろ閉じられたスティーブ・ジョブズ氏にとって、小生は最末端ではあっても、弟子の一人と数えてもらえるのではないか。顧みればつくづく愚かしい我が棋譜を、何人かの知り合いに見てもらうだけにとどまらず、どなたが見るかもわからないこの場で臆面もなく曝そうというのだから。たとえ我が身は愚かでも、碁への愛着は人並み以上に持っているつもり。絶えず飢えたる魂を持ち続け、皆様からの厳しいご指摘を糧に少しでも上達のヒントを得たい。世間の方々はこれを“虚仮(こけ)の一念”と呼ぶのだろう。

 10月14日~16日の3日間開かれた「箱根ファンフェスタ2011」(前身は2006年にスタートして10回開催した「箱根ふれあい囲碁大会」、その後2009年から現行スタイルに。ご参考までに過去ログ、1011)で久しぶりに孔令文六段にご指導いただいた碁をご笑覧いただきたい。

第1譜(白1〜白27)

 手合い割りは4子局の自由置き碁。教えていただく立場からはなるべく変化に富む場を設定したい、教える側の先生にとっても新鮮な感覚で打っていただけるのではないか――というのが自由置き碁を愛用する愚生なりの理由。今回は4隅の星から左に少々回転させて右上から反時計回りに星、高目、目外し、小目と置いた。ひと目見たレーブン先生が「ホッホー!」とうれしそうな顔をされた(ように愚生には思えた)。「この局面で、白から既に最善手があるのでしょうか」と尋ねると、「きっとないでしょう」と答えてポンと打たれた白1は左下目外しの黒(5-十七)へのボウシ(5-十五)。

 意表を突かれて私は、右への1間トビ、白1へのツケ(左右どちら?)、ハサミ(4-十三小ゲイマなど候補多数)を思い浮かべたが、しょせんは結論が出るはずもない。「ままよ」と右からツケヒキを敢行すると、白5は7-十四ノビキリ。5-十三カケツギに黒7-十四以下の模様策戦を期待したもくろみは序盤早々に崩壊した。しかし戦いを挑まれて引く手はない。早くも熱くなりながら黒6(5-十四)と切ると、以下黒18までバタバタ進み、白19は少考後に19(2-十一)にノビキリ。以下、黒24(8-六)でレーブン先生が2度目の「ホッホー」とつぶやかれたほかはサラサラ流れて白27まで。

 さてここまでの進行について、皆様の忌憚のないご意見をうかがわせて下さい。少なくとも黒には明白な疑問手が最低1つ、白には、先生ご自身が仕方なく打たれた無理手が1つあるようです。なお、本譜は既にかささぎさんと梵天さんに見せてご意見も聞かせていただきましたが、改めてこの場でご披露いただくとともに、別のご意見等もあればお示しいただければ幸いです。

亜Q

(2011.10.29)


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